男子の集団が通りかかった。6年生ぐらいだと思う。
顔も知らない子たちだったけど
会話が聞こえてきて思わず返事してしまった。
「おっ、あの自転車の後ろにのりてぇ。」
「あ、いいよ、おいでぇ。乗りなよ!!」
「えっ?僕ですか?ボクこっちに帰りますけど どっちですか?」
あいにく反対方向だったから、結局いいですって断られた。
そりゃそうだろう、知らないおばさんの自転車、
しかも幼児用椅子になんかだれも乗らないだろう。
「じゃあ また今度おねがいしまーす。」
「ん、分かった。またねー。」
と、気持ちよくわかれた。
思えば毎日この自転車で幼稚園の送り迎えをしていたな。
とても懐かしい。
おんなじ速さで風を感じて、同じ高さで景色を見て。
坂道では「おかあさんがんばれ!」とかけ声をかけてもらった。
ひばりの声、夕焼け、虹、きれいな雲、色んなものにに立ちどまり、感動して。
寒い日には私の背中に手を入れさせて指を温めた。
今ではもう、ただの荷物置き場になってしまっているが、
自転車の思い出は、尽きない。